リフォーム工事の工程管理とは?目的・重要性・手順などを解説します
「工程管理」という言葉を耳にするものの、その具体的な意味や重要性、そしてどのように実践すれば良いのか、疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、リフォーム工事の工程管理の目的や重要性から、具体的な手順、そして紙やExcel、専門ソフトを使った効率的な方法など、リフォーム工事を成功に導くために不可欠な工程管理の全てを解説します。
リフォーム工事の工程管理とは

リフォーム工事における工程管理とは、計画通りに工事を進行させ、品質、コスト、安全といったあらゆる要素を最適化するためのマネジメント活動を指します。
具体的には、工事の着工から完成・引き渡しに至るまでの全工程を対象に、スケジュール作成、人員・資材の手配、進捗状況の確認、問題発生時の対応などを行います。
リフォーム工事は、新築工事と比較して規模が小さいケースが多いものの、既存の構造物への対応や居住者の生活への配慮、予期せぬ事態への対応など、特有の複雑さを伴うため、適切な工程管理が欠かせません。
これにより、お客様との約束である工期を守り、期待通りの品質を提供し、予算内で工事を完了させることが可能となります。
リフォーム工事の工程管理の目的・重要性
リフォームの工程管理は、工期・品質・コスト・安全・近隣配慮を同時に成立させ、施主満足を最大化するための中核活動です。
- 工期遵守:長納期品の到着日から逆算し、順延要因(天候・検査待ち)も計上。
- 品質確保:下地精度・水平/通り・隠蔽部写真・通水/通電試験で手戻りゼロを狙う。
- コスト最適化:職種の山積み平準化と適正在庫で待ち時間と無駄を削減。
- 安全/近隣配慮:養生・騒音/粉じん管理・共用部運用を日次で徹底。
- 顧客満足:報連相と合意形成、引渡し品質で信頼を積み上げる。
これらの目的を達成することで、リフォーム事業の信頼性向上と持続的な成長に貢献することができ、さらに、お客様・職人・事業主の三者すべてにとってメリットをもたらす、リフォーム工事の根幹をなす活動と言えるでしょう。
工程管理と生産管理の違い
工程管理と生産管理は、どちらも「管理」という言葉が付き、混同されがちですが、それぞれ異なる目的と範囲を持っています。
|
項目 |
工程管理 |
生産管理 |
|
主な対象 |
個別のリフォーム現場(部屋/工種/日程の段取り) |
企業全体の生産活動(複数製品・複数拠点) |
|
目的 |
工期・品質・コスト・安全の達成 居住者・テナントへの影響最小化 |
需要に応じた供給最適化 原価・在庫・納期の全体最適 |
|
管理範囲・階層 |
全体工程 → 部屋別/工種別 → 2〜3週間工程 → 日繰り |
中長期計画 → 月次/週次計画 → 日次生産計画 → 現場指示 |
|
管理する要素 |
順序・所要日数・職種割当、材料納期、搬入経路/EV予約、共用部養生、断水/停電切替、検査(下地精度・水平/通り・隠蔽部写真・通水/通電試験)、追加工管理 |
需要予測、生産能力・ライン負荷、資材調達/MRP、在庫、安全在庫、品質・原価、ロット/段取り替え、出荷計画 |
|
リスク・制約 |
解体後の下地不良判明、騒音/粉じん時間帯、共用部規約、長納期品遅延 |
需要変動、供給制約(資材/人員/設備)、品質問題、物流遅延 |
|
関係性 |
各現場に直接適用(段取り・運用・是正) |
会社全体を統括(工程管理を内包し上位から最適化) |
工程管理は、特定の工事やプロジェクトをいかに効率的かつ計画通りに完了させるかに焦点を当てます。
一方、生産管理は、企業全体としてどのような製品を、いつ、どれだけ、どのように生産するかという、より広範で戦略的な視点での管理を指します。
リフォーム工事においては、個々の現場で工程管理が中心となりますが、複数の現場を同時に動かす企業では、その上位概念として生産管理の考え方が役立つ場面もあるでしょう。
工程管理と進捗管理の違い
工程管理と進捗管理もまた、密接に関連しながらも異なる役割を持つ概念です。両者の違いを理解することは、効果的なプロジェクト運営に繋がります。
|
項目 |
工程管理 |
進捗管理 |
|
主な役割 |
計画の策定と全体像の設計 「どう進めるか」を定める |
計画に対する現状の把握と評価 「今どうなっているか」を確認する |
|
目的 |
最適な工期、品質、コスト、安全の実現 プロジェクトの全体的な方向性を決定する |
計画からの逸脱の早期発見と軌道修正 問題発生時の迅速な対応を可能にする |
|
実施時期 |
工事開始前(計画段階)から工事中(全体的な監視) |
工事中(定期的な確認) |
|
管理する内容 |
タスクの洗い出し、順序付け、期間設定、担当者割り当て、全体スケジュール、資源計画 |
各タスクの完了状況、残作業、遅延の有無、品質の状態、問題点 |
|
関係性 |
工程管理の中に進捗管理が含まれる 工程管理で立てた計画を、進捗管理で日々監視・評価し、必要に応じて計画を修正する |
|
つまり、工程管理は「工事全体をどう進めるか」という設計図を描くことであり、進捗管理は「その設計図通りに工事が進んでいるか」を日々確認し、必要に応じて調整することと言えます。
工程管理で明確な計画がなければ、進捗管理も適切に行うことはできませんし、進捗管理がなければ、計画からのずれに気づかず、最終的に大きな問題に発展してしまう可能性があります。
リフォーム工事の工程管理の手順

工程管理は、一般的にPDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)に沿って進められます。
計画を立てる
リフォーム工事の成功は、この計画段階でいかに詳細かつ現実的なプランを立てられるかにかかっています。施主様との綿密な打ち合わせから始まり、工事全体の設計図を描く重要なフェーズです。
- 目標設定・要件定義
範囲(部屋/工種)・品質・デザイン・予算・納期を施主と合意。
制約(居住中/管理規約・騒音/粉じん時間帯・断水/停電切替・搬入経路)と変更ルールを明文化。
- WBS(作業分解)
例:現地調査→近隣/管理申請→養生→解体・撤去→下地補修→配管/配線→内装仕上げ→設備据付→通水/通電試験→クリーニング→施主検査/是正→引渡し。
各タスクに担当・所要・成果物を付与。
- スケジュール(工程表)
依存関係を設定し、長納期品(キッチン/UB/建具等)の到着日を基準に逆算する。
バッファ(解体後判明・乾燥/硬化・検査待ち)を計上し、ガントチャート/工程表で可視化。週次で見直し。
- 資源計画・予算
職種別要員の山積み・平準化、資材発注とリードタイム、搬入/EV予約・養生を確定。
見積はWBS起点で積上げ、原価科目(人件費/材料/外注/諸経費)を設定。
- リスク管理
想定:下地不良の発見、納期遅延、天候、追加要望、近隣クレーム。
対応:代替作業メニュー準備、予備日/予備費、代替仕様の選択肢、部分引渡し、変更合意書で工期・費用を同時更新。
- 検査・記録の計画
下地精度/水平・通り、隠蔽部写真、通水/通電試験のチェックポイントを工程に組込み、是正フローと記録管理(台帳管理)を決める。
この骨子をもとに、全体工程→部屋/工種→2〜3週間工程→日繰りの階層で落とし込むと、段取りと手戻り防止が明確になります。
計画を実行する
計画段階で立てた綿密なスケジュールと予算に基づき、実際の工事を開始するフェーズです。ここでは、計画通りに進めるための進捗管理と品質管理が特に重要となります。
- 作業開始と指示
- 進行管理(早期検知・即是正)
- 品質管理(隠蔽前に止める)
- コスト管理(予算逸脱の即掴み)
- コミュニケーションと情報共有
- 問題発生時の対応フロー
- 最低限そろえる運用帳票(台帳)
この骨子に沿って運用すれば、遅れの早期発見・手戻り抑制・証跡確保が回り、計画通りの完了に近づけます。
結果を評価する
工事が完了した後、その結果が計画通りであったか、あるいはどのような差異があったのかを客観的に評価するフェーズです。この評価は、次の「改善」へと繋がる重要なステップとなります。
- 進捗・品質の評価:計画対実績で遅延/前倒しと要因を特定し、設計・要望・業界基準への適合を施主FBと完了検査(仕上がり・機能・安全)で確認。
- コストの評価:実績費用×予算を照合し、超過時は資材高騰・追加工・手戻り等の原因を分析して改善に反映。
- 施主満足度の評価:引渡し後のアンケート/ヒアリングで満足度と改善点を把握し、次案件の品質向上に活用。
問題を改善する
評価フェーズで明らかになった問題点や課題に対し、具体的な改善策を検討し、次回のプロジェクトや今後の業務プロセスに活かしていくフェーズです。PDCAサイクルを完結させ、継続的な品質向上を目指します。
- 原因分析:「なぜなぜ分析」等で根本要因を特定。
- 改善策の立案・実行:効果・実行可能性・コストで評価して実装。
- フィードバックと標準化:有効な対策を次期計画に反映し、手順として定着させる。
工程管理は一度で完結せず、PDCAを継続して精度を高める営みです。改善は次の「計画」へつながり、プロジェクトの再現性と品質を底上げします。
工程管理をする方法

リフォーム工事の工程管理を円滑に進めるためには、適切な方法を選択することが肝要です。
紙やホワイトボードを使用する
最も手軽で直感的な方法が、紙やホワイトボードを使った工程管理です。小規模なリフォーム工事や、チーム内での簡単な情報共有に特に適しています。
メリット
- 手軽さ: 特別なツールや知識が不要で、すぐに始められます。
- 視覚的な共有: 一目で全体像を把握しやすく、チームメンバー間での認識合わせが容易です。
- 直感的な操作: 変更があった場合も、その場で書き換えや移動が可能です。
デメリット
- 情報共有の限界: 遠隔地にいるメンバーとの共有が困難です。
- 更新の手間: 大規模な変更や頻繁な更新が必要な場合、手間がかかります。
- 紛失・破損のリスク: データとして保存されないため、紛失や破損のリスクがあります。
- データ分析の困難さ: 過去のデータ蓄積や分析が難しく、改善活動に活かしにくい側面があります。
例えば、ホワイトボードにガントチャートを手書きしたり、付箋を使ってタスクを可視化する「カンバン方式」を取り入れたりする方法が挙げられます。日々の進捗をチームで共有し、迅速な意思決定を促すには有効な手段と言えるでしょう。
Excelやクラウドを使用する
デジタルでの工程管理の第一歩として、多くの企業で導入されているのがExcelやGoogle スプレッドシートなどのクラウド型スプレッドシートです。費用を抑えつつ、ある程度のカスタマイズ性やデータ管理を求める場合に有効です。
Excelを使用する場合
メリット
- 高い汎用性: 多くのPCに導入されており、特別なソフトウェアの購入が不要です。
- 柔軟なカスタマイズ: 会社の業務フローやプロジェクトに合わせて、自由に工程表の形式や項目を設計できます。
- 計算機能: 日程計算やコスト計算など、数値データの管理にも優れています。
デメリット
- リアルタイム共有の難しさ: ファイルを共有する場合、常に最新版を共有する手間がかかり、共同編集には限界があります。
- バージョン管理の煩雑さ: 複数の担当者が編集すると、どのファイルが最新か分からなくなることがあります。
- 複雑なプロジェクトでの限界: 大規模なプロジェクトや多数のタスクが絡む場合、管理が煩雑になりがちです。
クラウドスプレッドシート(Google スプレッドシートなど)を使用する場合
メリット
- リアルタイム共同編集: 複数のメンバーが同時に編集でき、常に最新の情報を共有できます。
- 場所を選ばないアクセス: インターネット環境があれば、どこからでもアクセスし、確認・編集が可能です。
- バージョン履歴: 変更履歴が自動的に保存されるため、過去の状態に戻すことも容易です。
デメリット
- オフラインでの利用制限: インターネット接続がない環境では、機能が制限される場合があります。
- 大規模プロジェクトでの機能不足: 専門の工程管理ソフトと比較すると、高度なリソース管理やレポート機能は劣ります。
リモートワークや複数の拠点を持つリフォーム会社において、情報共有の効率化に貢献するでしょう。
工程管理ソフト・アプリを使用する
より高度で効率的な工程管理を目指すのであれば、専用の工程管理ソフトやアプリの導入を検討することをおすすめします。大規模なリフォームプロジェクトや複数の案件を同時に進行する場合、その真価を発揮します。
メリット
- 専門機能の充実: ガントチャートの自動生成、リソース管理、進捗の自動更新、コスト管理、リスク管理など、工程管理に特化した機能が豊富です。
- リアルタイムでの情報共有と可視化: プロジェクト全体の進捗状況や個々のタスクの担当者、期限などが一目で分かり、チーム全体の生産性向上に貢献します。
- 高度な分析とレポート機能: 過去のデータに基づいた進捗予測や、詳細なレポート作成により、プロジェクトの改善点を発見しやすくなります。
- 連携機能: 会計ソフトや顧客管理システム(CRM)など、他の業務システムとの連携が可能なものもあります。
デメリット
- 導入コスト: 無料プランがあるものもありますが、多くの場合は月額費用や初期費用が発生します。
- 学習コスト: 新しいツールを導入するため、チームメンバーが使い方を習得する時間が必要です。
- 過剰な機能: 小規模なプロジェクトでは、機能が多すぎて使いこなせない、あるいはオーバースペックになる可能性があります。
代表的なツールには、Asana、Trello、Backlog、Jira、Microsoft Projectなど、多種多様なものがあります。
自社のリフォーム工事の規模、チームの人数、必要な機能、そして予算を考慮し、最適なツールを選ぶことが重要です。
よくある質問
工程管理とは何ですか?
工程管理は、工事をいつ・誰が・どの順番で・どの資源で進めるかを設計し、実行中に遅れ・ムダ・手戻りを抑えながら、品質・安全・コスト・納期のバランスを取るマネジメントです。
計画(工程表・体制・資材手配)→実行(段取り・日次/週次運用)→監視(進捗・出来高・リスク)→是正(リスケ/増員/手順見直し)のPDCAを回します。
工程管理を怠ると、どのような問題が発生しますか?
工程管理の資格はありますか?
工程管理そのものに特化した国家資格は一般的ではありませんが、建設業で活用できる資格は「施工管理技士」です。
※施工管理技士に関して詳しく知りたい方は「施工管理技士の資格とは?種類・難易度・取得のメリット」をご覧ください。
まとめ
この記事では、リフォーム工事の工程管理の目的・重要性から、具体的な手順や効果的な実施方法までを整理して解説しました。
工程管理は、単なる進捗の追跡ではなく、品質・コスト・納期を両立させてお客様に最適な成果を届けるための土台です。現場での仕事内容を具体的にイメージしていただけていれば幸いです。
もしリフォーム工事に少しでも関心をお持ちいただけたなら、東京・小金井市のリフォーム会社「株式会社エムアンドエムプロデュース」で、私たちと一緒に“暮らしの場”をつくる仕事に挑戦しませんか。
現在「株式会社エムアンドエムプロデュース」では、「営業部(住宅リフォーム工事営業)」「工事部(住宅・店舗現場管理)」を募集しております。
居住工事から店舗工事など、現場で通用する力を日々の実務のなかで身につけられます。
また、工程管理の強力な武器となる「施工管理技士」のスキルアップも手厚く支援します。社内研修、OJTでの実践フォローまで、資格取得と実務力の両面で成長を後押しします。
より良い現場とより良い暮らしを一緒に実現していきましょう。ぜひ、ご連絡をお待ちしています。